テクニカルダイビングに特化 するSSI XR(エクステンデッドレンジ)トレーニングセンター「スティングレイ・ジャパン」から、快挙達成のニュースが届きました!スティングレイ・ジャパンに所属するXRインストラクタートレーナーの鈴木雅子・智子姉妹(以下、鈴木姉妹)が「水深105mへ同時到達(合計211m)」を果たし、ギネス世界記録挑戦に認定されました!
このチャレンジの裏側には、綿密な計画、安全管理、ダイビングや海に対する熱意、そしてチームの存在が。本稿では、当日の水中プロセスからチーム体制、挑戦に成功して想うこと、次なる挑戦までを、鈴木姉妹へのインタビュー形式でお伝えします。

「姉妹で105m」に込めた意味。ギネス成功までの一年
SSI広報(以下、──) まず、今回のギネス世界記録挑戦にあたっての経緯を教えてください。
鈴木姉妹:ギネス世界記録に挑戦したきっかけは、日本のダイビング業界に何か明るい話題をつくりたいと思ったからです。特にギネス世界記録はダイバー以外の方でも知ってるじゃないですか。でも当初は「姉妹で同時に潜る」というジャンル自体がギネス世界記録に存在しませんでした。そこで私たちからギネス側に提案し、審査ルールや提出書類のガイドライン作成を含め、約1年をかけて新たな項目として整備していただきました。
── ギネス世界記録としては、新たな項目だったのですね。なぜ「姉妹で水深105m」にしたのでしょうか?
鈴木姉妹:テクニカルダイビングは“チームで潜る”ことが大前提です。水深100mは各教育機関のトライミックスコースで到達し得る節目でもあります。そこに5m上乗せすることで、コースで学んだ内容を自分たちの責任と判断で限界を広げる、という意味を明確にしました。また、ギネス世界記録の中には単独でのダイビング記録はいくつかありますが、私たちが目指すのは「チームでのダイビング」なので、姉妹二人で挑戦することにしました。
水深105mの水中世界。特別なことはしない、基礎を確実に。
── 今回の挑戦に向けて、特別なトレーニングは行いましたか?
鈴木姉妹:特別なことはしていません。普段から積み重ねている基礎を、丁寧に、確実に。同じことを当たり前にやりきるだけです。SSIをはじめ各指導団体のカリキュラムは、最新の理論と実践知が凝縮されています。体系的な学びを正しくつなぎ、現場で運用することが何より大切だと感じています。
── 基礎を確実にやる、間違いないですね。また、今回どのような器材を用いて挑戦されたのでしょうか?
鈴木姉妹:オープンサーキットで、メインはヘリウムを含むトライミックス。減圧用に複数のガスを用意し、計5〜6本を携行しました。ドライスーツ用の独立ガスも準備しています。予備ガスはサポートダイバー側にも配置し、万全の体制を確保しました。




── チーム体制についてはいかがでしょうか?
鈴木姉妹:ボトム(水深105m)に降りたのは私たち2人と、スティングレイ・ジャパンの代表でSSI XR トレーナーの野村昌司。野村自身は過去に水深122mを経験している私たちの師匠で、今回、監督者兼証拠映像撮影者として一緒に潜りました。サポートダイバーは3名で、ダイブクーザ代表であり、テクニカルダイビングチームメンバーでもある上田直史さん、JCS(日本海中技術振興会)会長の佐川純さん、これまで私達の元で特殊環境下でのサポートも経験しているコマーシャルダイバーでありチームメンバーの山口浩人さんに立会いいただきました。皆様には心強いサポートをいただき本当に感謝しています。
── 105mという深度に対して、どのように感じましたか?
鈴木姉妹:水深90m前後まではこれまでも複数回経験がありますが、率直に、水深100mは“遠い”と感じました。陸上の「100m」と聞くと割と馴染みのある距離や高さですが、海中での「100m」はまったく違います。圧力の増加でガス消費が早まり、温度低下や視界の変化、浮力・器材の負荷が重なることで、その“距離”は体感的に何倍にも広がるんです。しかし、今回の舞台である和歌山・古座沖は、白い砂地が広がる美しい海底で、当日は透明度も高く、これまで経験していた暗く沈む深淵」とはまた違う世界がありました。

──水中が明るいだけで精神的にも変わりそうですね。実際の潜水の様子を教えてください!
鈴木姉妹:水深105mまでは6〜7分で到達し、ボトム(水深105m)に到着するやいなや、ギネス世界記録用の証拠写真を撮影。ちなみに、そのときの映像を見返したら、私たち、かなり喋っていました(笑)。ボトムに到達したときは、やはりそれだけ嬉しく、高揚していたのだと思います。ボトムには約4分滞在し、浮上は水深63mから3m刻みで減圧停止を行いました。最終の減圧停止を終えて水面に顔を出した瞬間、明るい光に照らされ、チームの皆さんの顔を見た瞬間、張り詰めていた緊張がふっとほどけていくのを感じました。計画どおりに進められたという大きな達成感と同時に、ダイブコンピュータのログやガス残量、体調チェックを淡々と確認し合い、チーム全員で無事を共有しました。潜水のトータルタイムは約105分でした。

水面で「おかえり!」と声をかけてくれたサポートメンバーの笑顔をこの先もずっと忘れない!

成功の背景には“多くの支え”があった
──改めて今回の成功を振り返ってみていかがですか?
鈴木姉妹:約20年前、私たちは水泳経験がほとんどない状態でダイビングを始めました。当初は水への抵抗心が強かったですし、技術的にも苦手なことが多くて、上達するには本当に多くの時間が必要でした。そんな私たちをテクニカルダイバーとしてここまで育ててくれた野村には、感謝の気持ちでいっぱいです。また今回の成功は、当日に直接関わってくださった方々はもちろん、日頃からお世話になっている各地の現地サービス、関係者のみなさま、応援してくださるダイバーの方々、そして私たちの挑戦を支えてくれた仲間の力があってこそ実現しました。挑戦成功後は多くの方が自分のことのように喜んでくださり、とても感慨深いものがありました。

そして今回、ステップをひとつずつ重ねれば、できることは確実に増えていくことを実感しました。テクニカルダイビングは“怖い”“敷居が高い”という先入観が先行しがちですが、正しい学びと準備などのステップをひとつずつ重ね、忍耐強く継続できれば、年齢や性別に関係なく楽しめる分野です。私たちも、その道筋をこれからも提示していきたいと思います!
── 今後の目標を聞かせてください。
鈴木姉妹:今回は自分たちの潜水領域を広げることにフォーカスしました。今後は、これまでも行っていたトライミックスを活用したディープでの生物観察や、沈船などの記録・調査にも更に力を入れていきたいです。私達は「日本」のテクニカルダイビングフィールドが大好きです。もちろん世界中には素晴らしいフィールドが数えきれないほど存在していると思いますが、日本にも素晴らしいテクニカルダイビングフィールドが数多くあります。だからこそ、テクニカルダイバーがもっと国内で楽しめるようなテクニカルダイビングフィールドを増やしていきたいとずっと思っているんです。そのためにも、今回のギネス挑戦のように、国内での挑戦そして発信を今後も続けていきたいと思います。
大切なのは継続すること。これからもテクニカルダイビングの価値や魅力を、写真・映像や講演などで丁寧に共有し、正しい知識と準備があれば誰でもチャレンジできる。その実例を積み重ねていきます。

── 雅子さん、智子さん、ありがとうございました。改めて、この度はおめでとうございます!今後の活動も楽しみにしています。
水深105mという数字の背後には、綿密な計画、安全管理、ダイビングや海に対する熱意、そしてチームの存在がありました。ギネス世界記録の成功はゴールではなく、テクニカルダイビングの未来へ続く通過点です。スティングレイ・ジャパン・鈴木姉妹の挑戦は、次なる一歩を踏み出すダイバーたちの背中を、静かに、しかし力強く押してくれるはずです。


スティングレイ・ジャパンについて

スティングレイ・ジャパンは、神奈川県伊勢原市を拠点に活動するSSI XRトレーニングセンター。テクニカルダイビングをはじめとするアドベンチャーダイビングといった、より高度で専門性の高い分野を提供しています。ダブルタンクやサイドマウント、ディープ、沈船ダイビングや洞窟ダイビングなど、多くのダイビングスタイルに対応しており、インストラクター自身も常に現場で潜り続けることで、最新の知識と技術を確実に提供できる体制を整えています。具体的な目標を持つダイバーや、さらに深く海の世界を探求したい方々を、技術面・安全面からしっかりとサポートしています。
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▶︎ 野村昌司 Instagram
